誰がドラえもんをベトナムに売ったか

2013年10月1日火曜日


ハノイの街中で、よくドラえもんを見かけます

日本で知らない人はまずいないほどの、大御所人気キャラクター。

ちなみに、私の出身は藤子・F・不二雄先生と同じ富山県高岡市です^^


ベトナムでも、子供から親の世代まで、
みんなドラえもんを知っています。

ちなみに、こっちでは「どらえもん」じゃなくて
ドレーモン」と言わないと通じません。
登場キャラクターの名前もベトナム語の発音に合わせて、
しずかちゃんが「スカー」だったり、
なぜかスネ夫が「セコー」だったり笑




おしゃれなイマドキの女の子もドラえもんのTシャツを着ていて、
びっくりします。

こんなに人気なドラえもん。
海を渡って、ベトナムにどうやって浸透したか。
ちょっと気になったので調べてみました。


ドラえもんは、かくしてベトナムで人気者になった


ドラえもんのベトナム語版が出版されたのは、1992年
今から約20年前のベトナムの子供たちにも読まれていたとは、
結構驚き。

ここで気になるのは、著作権料はどうなっていたかということ。
国営出版社による出版でありながら、
著作権については正式な許可なしだったです。
そもそも、ベトナムには「著作権」という考え方がまだ根付いていなかったとか。

いわゆる、海賊版としての導入が、ドラえもんのベトナムでの第一歩でした。

ニセモノ!



その後、版元の小学館との交渉の末、
それまでの著作権料をベトナムの出版社が支払うことで
一旦、合意がまとまりそうになりました。

しかし、作者である藤子先生の希望によって、
過去の著作権料約1000万円を元手に、「ドラえもん教育基金
として、ベトナムの子どもたちの教育に当てられるようになったそうです。
おかげで、年平均500人の子どもの支援が継続的に行われているとか。

キャラクターやストーリーの魅力に加え、
教育基金といったクリーンなイメージもあってか、
ドラえもんは現在までで218巻
累計2500万部の大ベストセラーとなっています。


ドラえもん海賊版の行く末


私は個人的に、このベトナムでのドラえもん著作権問題の収拾のつけ方を、
とても好ましく思います。
海賊版に対して差し止めをするのでもなく、
ドラえもんを読みたい子どもたちの期待に応えつつ、
さらに基金を設けることでベトナムの子どもたちの教育にまでポジティブな影響を与える。



「ビジネスなんだから、ちゃんと著作権を守ってお金を儲けなきゃ。」
「海賊版はありえない」

というのも、わかります。

ただ、You Tubeやその他のフリーサイトで、
漫画やアニメはすぐに拡散されてしまう時代。

ベトナム人の友人も、こちらで正規版が発売される前に日本のアニメを見ていました。
日本で進撃の巨人が流行るのと同じタイミングで、ファンになっている子も。


現状、コンテンツからの著作権料で直接儲けるのは難しい中で、
どのように日本のコンテンツをビジネスとしていくか。



海外で、今後日本のコンテンツをどう売っていくか


ずらり
ハノイのナイトマーケットにて

サイトの規制などももちろんですが、
それよりはもっと長い目で、「日本ブランド」を売っていく
ところにチャンスがあるのではないかと思います。

こちらベトナムに来てみて思ったことは、
日本人がベトナムを知っているよりも100倍くらい、
ベトナム人は日本についていろいろ知っているということです。

面白いのは、世代によって日本のイメージが違うこと。

ベトナムに来る前は、日本はSONYやCannon、HONDAなど、
技術大国としてのイメージがベトナムでは強いのだろうと考えていました。

しかし、そうした「日本=質の良い日本製品」というイメージを持っているのは、
どちらかというと年配の世代で、
今の私たちの世代だと、「日本=アニメ、漫画」というイメージを持っているそうです。


「日本ブランド」は、製品を通してではなく、
アニメや漫画などのコンテンツを通してこそ、
伝えていきやすいのではないでしょうか。

例えば、ドラえもんの漫画を読んだり、アニメを見たりしていると、
自然とバックグラウンドとしての日本が映ります。

机が並ぶ教室の様子や商店街の様子、
どら焼きなどの食べもの、
春といえば桜といった日本の価値観など。


どんなに規制しても、海賊版が広まってしまう現状があります。
その現状を前提とした上で、
どのように日本ファンを、日本に利益がある形で巻き込むか。
観光誘致や、日本製品を買ってもらうためにはどうアプローチすれば良いのか。

コンテンツそのものよりはむしろ、
コンテンツによって自然とPRされる「日本ブランド」を売ることまでを視野に入れて
売り方を設計していくことが大切だと思います。


驚き、楽しさ、感動をグローバルに共有する


日本語学科にいる大学生の友人に、
「なんで日本語を勉強するの?」と聞いたことがあります。

彼女は、「日本の漫画を読んで、日本という国についてもっと知りたくなったから」
と答えてくれました。

たまたま入ったカフェでお兄さんが、カタコトの日本語で話しかけてくれたこともありました。

彼は、「日本文化について興味があって、独学で日本語を勉強しているんだ」
と言っていました。



日本の外にいる人たちが、
日本の文化を知って、日本そのものを好きになってくれていることを、
純粋に嬉しく感じます。

「昔は、お菓子を買うのを我慢してまで、ドラえもんの漫画を買っていたよ。
いつも最新刊を読むのが何よりの楽しみだった。
ドラえもんは、子供の頃の大切な思い出の一つになっているね。」

こちらで知り合った、30代の方が言っていました。



自分が感じていた、発売日を待つじれったさや、
漫画を読んで感動した時の気持ち、
昔の漫画を読み返して懐かしむ気持ちなど、
日本だけでなく、世界中のたくさんの人が同じように感じているのだと想像すると、
なんだかわくわくします。

漫画を通してつながっている、ような。

楽しむ気持ちに差はなく、罪もありません。

漫画やアニメを楽しむ人たちの気持ちに応えつつ、
コンテンツを作った人たちの努力がきちんと報われるような仕組みはどうしたら作れるか。
ドラえもんを通して、また興味が広がりました。

それでは!




参照記事:

海賊版から出発 ドラえもん、ベトナムで20年(日経新聞)

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